心の声は聞きたくない!

「よぉ」

後ろから葉山くんの声がした。

短い言葉なのに振り向かなくても分かる彼の声。

「お、おつかれさま」

「おう」

「珍しいね、昼休みくるの」

「たまたま通ったらお前がいるの見えたから」

「……」

「……」

葉山くんはそれ以上何も言わない。

何か言わないと。

沈黙になるとあれこれ考えちゃうから。

わたしがいるのが見えて立ち寄ってくれたことに喜んでしまうから。

「うさまる、抱っこしてみる?」

キューッと締めつけられる胸の痛みに気づかないふりをして葉山くんを振り向きざまに明るく言う。

でも、葉山くんの顔はまともに見られない。

どんな顔をしてるの?

心の中では何を考えてるの?

「いや、うさまる怖がらせるとかわいそうだから」

「そっか……」

「……」

また沈黙。

「わたしもう行くね」

行かないでとわたしの胸に小さな手でしがみついてくるうさまるに、ごめんねと小声で謝った。