心の声は聞きたくない!


「はぁ」

(澪、さっきからため息ばっかだなぁ)

(何かあったのでしょう、あたしたちに話してくださいな)

うさまるとユキちゃんが心配そうにわたしを見上げてる。

職場体験以来、わたしは変だ。

ボーッと考え事をしてしまうし、気づけばため息ばかり。

昼休みは図書室に行くのがお決まりだったけど最近はもっぱらここ、ウサギ小屋。

(もしや、恋わずらいというものでは)

「そ、そんなわけない!」

葉山くんと少し仲良くなって、少し意識しちゃっただけ。

少しドキドキしたけど、それは恋とかじゃない。

あわてて否定するわたしにハカセがニヤッと口の端をあげた。

なにハカセ、あなた本当にウサギ?

恋わずらいなんて言葉どこで覚えたのよ。

しかもその表情、人間みたいなんですけど。

(恋わずらいってなに?)

うさまるが首をかしげる。

(あたし、知ってます。病気とは違うのだけど、誰かのことを思うと胸が苦しくなるのよね。あたしも以前、ハカセのこと思うとよくなってました……キャッ)

ユキちゃんが顔を隠すようにしきりに前足で顔をかいた。

(ユキちゃん、それはみんなに秘密だろ)

ハカセがユキちゃんの鼻をツンツンと前足でつついた。

(そうだったわ、あたし口をすべらせちゃった)

(まったく、ユキちゃんはかわいいな)

ハカセとユキちゃんって恋人……恋ウサギだったの?

どおりで、いつも仲良さげなわけだ。

(澪、恋わずらい……今おいら、それなってる)

うさまるが目をうるうるさせて胸をおさえている。

「うさまるっ」

うさまる、ユキちゃんのこと好きだったんだ。

わたしはうさまるをぎゅっと抱きしめてあげた。