わたしが呼び出された校舎裏に向かうと、同じクラスの真面目男子が待っていた。
「あの、この前の席替えのときから、立花さんのことが気になっちゃって……。好きです」
真面目男子が両手を握りしめて顔を真っ赤にして言った。
もしかしたら、初めての告白なのかもしれない。
「席替えのとき?」
わたしは上目遣いで彼を見た。
ええ、覚えてますとも!と食いぎみに言いたいのをなんとか堪える。
ここでそんなこと言ったら、今までの努力が水の泡だ。
「覚えて、ない? この前の席替えで、もともと隣の席だった僕に離れるの寂しいなって、こっそり手を繋いでくれたこと」
「……それは友だちとして言ったつもりだったの」
わたしの計算通りだった。
告白されたら、もうわたしの目標は達成。
心の中でガッツポーズしたのを悟られないように、わたしはしおらしく振る舞う。
「勘違いさせちゃって、ごめんなさい。気持ちには答えられないよ……ごめんなさい……」
あとはこうやって瞳をうるうるさせて、か弱く謝れば……
「そんな、俺の方こそ勝手に勘違いしちゃって! ごめんね、忘れて! それじゃ」
真面目男子は早口に言って走り去った。
「ふふ、やったっ」
手帳を取り出して、さっきの男子のページを開き、クリア!と書く。
好きな食べ物からカラオケの十八番まで、知り得た情報は事細かに書き留めてきた。
こうやっていろんな男子のデータがつまった手帳が、わたしの努力の結晶とまで思ってた。
人の気持ちなんて考えてなかった。
ただもてあそんでいるだけだとも気づかずに。
本当に最低だった。

