心の声は聞きたくない!


「中学生の職場体験なんて、ただの真似事だ。でもこんな不真面目な生徒は初めてだ。もういいから帰ってもらえるかい……なんだね、その目は。ケンカを売っているのか」

葉山くんがわたしを隠すように田中さんの前に立ちはだかった。

「いえ。過去に何があったか知りませんが、こいつは不真面目なんかじゃありません。草むしりは必ず終わらせますので」

田中さんがフンと鼻をならして、乱暴に足音をならしながら去っていった。

胸が張り裂けそうに苦しい。

過去の自分が憎い。

唇をかみしめて泣くのを我慢していたら、

「お前が真面目なの、俺がよく知ってる。それじゃだめか」

葉山くんがわたしの顔をのぞきこんだ。

いつもの鋭い目つきじゃない。

優しさのこもったあたたかい瞳がわたしを見つめた。

(俺がお前を守るよ)

わたしを包み込むような心の声。

葉山くんのその気持ちだけで十分。

わたしにはもったいないくらいの言葉。

勇気がわいてきた。

「わたし、頑張りたい」

「その意気だ」

葉山くんがわたしの肩にがっしり手を置いて、大きくうなずいた。