「ごめん。草むしり全然進んでなくて」
赤ちゃんとお母さんの姿が見えなくなると、葉山くんが申し訳なさそうに唇をかんだ。
「謝ることないよ。困ってる人、放っておけないよ。見つかって、本当によかったね」
「すげぇよ、お前。見つけてくれてありがとう」
葉山くんがクシャっと目を細めて笑った。
初めて、人の心の声が聞こえるようになって初めて誰かの役に立てた気がする。
こんなわたしでも役に立てた。
「嬉しい……どうしよう、わたし。嬉しいよぉー」
ささいなことなのに。
それがすごくわたしの心を震わせて涙が出そうになった。
「大げさだな」
(優しいな、お前は)
葉山くんの大きな手がわたしの頭をポンポンと撫でた。
頬が熱い。
わたしは赤くなった顔をうつむいて隠した。
そして、この大きな手も、懸命に探していた姿も。
無事見つかったときのホッとした顔も、優しい眼差しも。
葉山くんの全部がじわじわとわたしの胸を熱くしていることに、わたしは気づかないふりをした。

