心の声は聞きたくない!


わたしは地面や菜の花の間に目をこらした。

「あっ! ありました、ありました!」

ヘアゴムが菜の花の黄色にまぎれているのを見つけた。

わたしが高々とヘアゴムを掲げると、

「あっ! きゃっきゃっ」

(あった! やったぁ)

赤ちゃんがパチパチと手をたたいて喜んだ。

「ああ、よかった。ありがとうございます……これ、わたしの入院中の母が……この子のおばあちゃんが作ってくれたものなんです。一歳の誕生日プレゼントにって。それで、きれいな菜の花畑で、このヘアゴムをつけて写真を撮って見せてあげたくて。本当に、ありがとうございました」

お母さんは葉山くんとわたしに何度も頭を下げて、涙ぐみながら喜んで、

「見つかってよかったですね。よかったら写真撮りますよ。お母さんも一緒に入ってください」

嬉しそうに赤ちゃんの横に並ぶお母さんを、葉山くんが優しく微笑みながら写真を撮った。

お母さんはそれから何度もお礼を言って去っていった。