心の声は聞きたくない!


草をむしり続けて、一時間は経った気がする。

進んだ距離は10メートルほど。

まだまだ先は長い。

立ち上がって、しゃがみっぱなしで痛くなってきた腰をポンポンとたたく。

「あれ?」

反対側で作業しているはずの葉山くんが菜の花畑の周りを行ったり来たりしている。

その傍らには、ベビーカーの赤ちゃんとお母さん。

「何か落とし物ですか?」

近づくと葉山くんもお母さんも、しきりに地面に目をこらして何かを探しているようだった。

「赤ちゃんのヘアゴム。黄色い花の飾りがついてるやつ」

葉山くんが菜の花を優しくかき分けて、探す手を休めない。

赤ちゃんはピンクのワンピースを着た女の子で、肩にやっとつくぐらいの髪を二つに結っていたんだろうけど、片方取れてしまっている。

片方には小ぶりでかわいい黄色い花飾りのヘアゴム。

これと同じものがどこかに落ちてしまったんだ。