初恋話が一段落すると、おばあちゃんたちの昔話や作った俳句を聞くのが楽しくて、気づいたら夕方になっていた。

「すっかり長居してしまったわ」

「そろそろ失礼しますね」

渡辺さんたちが帰り支度を始めると、

「また来てくださいな。光くんも、よければまた来てくれると嬉しいわ。これからも澪と仲良くしてちょうだい」

おばあちゃんが葉山くんに声をかけた。

「ぜひまた。今日は楽しかったです、ありがとうございました。じゃあ、また学校でな」

(本当に楽しかったなぁ)

最後にわたしに向けて軽く手を振った葉山くんの爽やかな笑顔がまぶしかった。

渡辺さんと松田さんの家はここから近いらしく、葉山くんは荷物を持ってあげて、送ってから帰るみたい。

「光くん、本当にいい子ね」

「……うん……」

おばあちゃんの言葉に、わたしは小さくうなずいた。

わたしは渡辺さんたちに速度あわせてゆっくり歩く葉山くんの後ろ姿から、なかなか目が離せなかった。