「どうして、葉山くんが!?」

「どうも」

(このお菓子うめぇ……熱いお茶に合うな)

驚くわたしと違って葉山くんは軽く頭を下げただけで、のんきにお茶をすすっている。

「こちらはね、渡辺さんと松田さん」

おばあちゃんに紹介されて、

「あ、えと、孫の澪です」

と挨拶すると渡辺さんたちは、かわいらしいお嬢さんね、と目を細めた。

とても優しそうな人たちだ。

「実は今日の散策は中学校の中を見てまわったんだよ。渡辺さんのご主人が教頭先生とお知り合いで、事前に中学校に許可をいただけてねぇ」

「楽しかったねぇ」

「中学生がハツラツと部活動に励む様が、いい刺激になりましたよぉ」

渡辺さんと松田さんは満足そうに大きくうなずいた。

「そうだったんですね。わたしも中学校行ったのに、すれ違いでしたかね」

わたしもおばあちゃんのとなりに座って、ひと息つきかけた。

あれ……いやいや、おばあちゃん!

それより葉山くんがいる理由教えて。

溶け込みすぎてて違和感なくなってるけど!

「そうそう。澪も学校のウサギ小屋に行くって言ってたから、会ったらびっくりするだろうねぇって思っていたら帰ってしまったって、光くんが教えてくれてねぇ。澪の話やウサギの話をしていたら、すっかり仲良くなってしまって。お茶に誘っちゃったのよ」

うふふとかわいく笑うおばあちゃん。

そんな軽く言うけど、一大事だよ。

おばあちゃん、葉山くんを下の名前で呼ぶほど仲良くなったの!?

葉山くんがこの家にいるなんて、想像したこともなかった。

「お言葉に甘えてお邪魔してすみません。みなさんとお話するのが楽しくて」

(誰かとゆっくり話すの久々だな。いいな、こういうの。優しい人たちだな)

葉山くんの心の声は、いつもよりおだやかで、ゆったりとしていた。