心の声は聞きたくない!


葉山くんのとなりにしゃがんで、みんなが美味しそうに野菜を食べる姿を見る。

「やっぱり、ユキちゃんはにんじんが一番好きだね。ハカセはほうれんそう、うさまるはキャベツをよく食べてる」

わたしは手帳を取り出してメモした。

掃除をすることになってから、ウサギについて自分なりに調べてまとめた手帳。

とことん調べあげるわたしの性格は健在だ。

「すごいな。俺も図書室でいろいろ調べようとしたけどあんまり飼育の本って置いてないんだよな」

葉山くんがチラッと手帳をのぞき見た。

慌てて手帳を隠す。

恥ずかしいし、あんまり手帳にいい思い出ないし……。

「ネットで簡単に調べただけ。大したこと書いてないよ」

「いいだろ、ちょっと見せて」

葉山くんが手帳を持つわたしの手に手を重ねてそっと引き寄せた。

ま、まって。

なんで手を重ねるの、手帳が見たいなら手帳を持てばいいのに、なぜ手を、手をーー……

わたしの手に葉山くんの手のぬくもりが伝わってくる。

それに葉山くんが顔を寄せて手帳をのぞき込むからすごく近い……。

顔が熱くなる。

わたし、きっと顔真っ赤だ。

「へぇ、春は抜け毛が多くなって飲み込むと危険なのか。だから、お前いつもブラッシングかかさずしてやってるんだな」

普段どおりの葉山くんの声。

動揺してるのはわたしだけなんだよね。

葉山くんの方を向けない。

きっと葉山くんにとっては深い意味もなく手が当たってしまっただけ。

でも、少しの期待もあったりして……