心の声は聞きたくない!


「ただいまー」

「おかえりなさい。おや、何か良いことでもあったかい?」

夜ご飯の準備をしながら、おばあちゃんがにこやかに言った。

「えー? いつもどおりだよ」

「そうかい?」

(その笑顔は良いことがあったようだね、よかった)

おばあちゃんはわたしの気持ちを見透かしてムフフと笑いを含ませた。

転校するにあたって自分の家からは遠すぎて通えなかったから、おばあちゃんの家に住まわせてもらっている。

おばあちゃんは5年前におじいちゃんを病気で亡くしてから一人暮らし。

わたしが一緒に住んでくれて嬉しいよとたびたび言ってくれる。

わたしの転校の理由はお母さんからも聞いていないみたいなのに、深く聞いてはこない。

いつも優しい大好きなおばあちゃん。

手を洗ってから、わたしも台所に立つ。

「いいんだよ、学校疲れたろう。ゆっくりしなさいな」

「おばあちゃんだって、今日は確かスイミングの日でしょ? わたしが一人で作るから座ってて」

「少しばかり疲れてるけど、大丈夫。だって澪に料理を作れるのが嬉しいんだからね」

おばあちゃんが力こぶしを作って見せてくれる。

おばあちゃんは趣味が多くて、スイミングやグランドゴルフ、編み物や俳句教室に忙しく通っている。

わたしよりも元気なんじゃないかと思うことさえあるほど、元気だ。

「それで、学校でいいことあったかい」

「実はウサギ小屋の掃除をすることになって、ウサギたちが本当にかわいいんだ」

おばあちゃんとまったり話していると、過去のこととか余計なこと忘れられる。

この時間がわたしは好きだ。