心の声は聞きたくない!

放課後。

葉山くんはホームルームが終わると同時に教室を飛び出していったから、てっきりウサギ小屋にいるかと思ったのに彼の姿はなかった。

あれ……まさか初日からサボるつもり?

「やっぱりそういう人なんだ……ね?」

わたしはほうきで小屋の中を掃きながら、わたしの足に頭をスリスリしているうさまるに言った。

(ん? なんの話?)

「なんでもないよ」

うさまるは首をかしげたけど、また頭スリスリ。

少しばかり、じゃまですよ……。

でもかわいい。

(あ、あのぉ。お忙しいところごめんなさい。あたしの名前は考えてくれましたか……?)

白ウサギがほら穴からピョコンと顔を出した。

「遅くなってごめん。考えたよ。ユキちゃんはどうかな? 雪みたいに真っ白だから」

(キャッ。ステキです、ありがとうございます)

「どういたしまして。それで……」

(ぼくの名前を聞こうじゃないか)

メガネウサギが前足で鼻の頭をクイッと掻いた。

人間がメガネを指で押し上げる仕草みたい。

「ふふ、ぴったりの名前思いついたよ。ハカセってのはどう??」

(悪くないな)

「よかったー!」

(あなたの名前もお聞かせ願いたい)

ハカセもわたしの足元に寄ってきて、ちょこんと座った。

真面目な口調とかわいい見た目のギャップがかわいくて思わずわたしの顔がにやけた。

(そうね、そうね。あなたのお名前は?)

ユキちゃんも目をキラキラさせてわたしを見つめる。

「わたしの名前は澪です、よろしくね」

しゃがんで自己紹介したら、みんながピンと耳をたててうなずいた。

(澪。おいらたちもう友達だよな?)

「うれしい。ありがとう」

この学校に来て一人も友達ができていないわたしにとって、うさまるの言葉が胸に染みた。

成り行きでなった飼育委員だけど、なってよかった。