(すごく楽しみです、どんな名前つけてくれるのかしら)

(べつに、楽しみってわけじゃないけど。早く決めてくれるかい)

白ウサギとメガネウサギからの期待にみちた眼差しから、おそるおそる葉山くんに視線を移した。

そこには眉間にシワを寄せた葉山くん。

「なんで一瞬で懐いてんの? コツとかあんの?」

「……」

予想外の葉山くんに、わたしはポカンと開いた口が塞がらない。

「にんじん隠し持ってるとか?」

「いや、そういうわけじゃ……」

「じゃあ名前、こいつ相当気に入ったのか。うさまるー」

葉山くんはしゃがんで手をたたいた。

(オオカミだ!!)

ウサギたちは葉山くんを見た瞬間、みんなすごい勢いでほら穴に隠れてしまった。

葉山くんの鋭い目をオオカミだと思ってしまうウサギたちの気持ち、分かるよ……

わたしは心の中でうんうん、とうなずく。

「逃げられた」

「ぷぷっ」

ムッとする葉山くんが可笑しくて、おもわず笑っちゃった。

「笑うんじゃねー」

「ごめんなさい、なんか葉山くんって素直な人なんだね。おもしろい」

「はぁ?」

(なんだ。こいつただの真面目なやつかと思ったけど笑顔かわいいじゃん)

「えっ」

不機嫌そうな顔とは裏腹に優しい葉山くんの心の声にドキンと胸が高鳴った。

笑顔がかわいいなんて初めて言われた。

言われたわけじゃないけど……

そう思ってもらえたことが嬉しくてくすぐったい。

わたしの気持ちに気づくはずもなく葉山くんはまた、うさまるに必死に呼びかけてる。

ほんと、おもしろい人。