今ごろ後悔してるんじゃないかな。
勢いで毎日掃除することになっちゃって。
教室に戻ってるかと思ったけどそこに彼はいなかった。
どこ行ったのかな。
この学校にきて1ヶ月。
まだ校舎を把握しきれてないわたしには、葉山くんの行きそうな場所の見当がつかない。
「あ……」
あてもなく校内を歩き回っていたら、裏庭の隅、ウサギ小屋の前でしゃがんでいる葉山くんを見つけた。
ウサギに挨拶でもしてるのかな。
これからよろしく。なんてね……
葉山くんがそんなこと言うはずないし、小さく体を丸めてしゃがんでいる葉山くんの後ろ姿は思い詰めているようにも見える。
「葉山くん、あの……」
なぐさめの言葉が思いつかなくて、おずおず声をかけたわたしを振り返った葉山くん。
「ああ、お前か」
(こいつらの名前、何にすっかなぁ……)
「へ……?」
葉山くんの予想外の心の声に、間抜けな声が出ちゃった。
後悔して落ち込んでるって思ったのに、すごくお気楽だ。
「へ? ってなんだよ」
「な、なんでもないです……」
「なぁ、こいつらに名前つけたいんだけど一緒に考えてくんねぇ? 俺、ぜんぜん思いつかないわ」
(やっぱ名前つけないと懐いてくれなそうだもんな)
うーん、と真剣に悩んでいる葉山くん。
てっきり勢いで毎日のウサギ小屋の掃除を買って出たと思ったけど違ったみたい。
きっと本気でウサギのためを思っての発言だったんだ。
わたしは自分が自然と笑顔になるのを感じた。