理科室につくと、他のクラスの人たちはすでに集まってるみたいだった。

理科室の後ろの広いスペースに椅子だけ並べてあって、空いていた端っこの2つに座る。

すみません、となり失礼します……

先に座った葉山くんに心の中で謝る。

「今日集まってもらったのは、ウサギ小屋の掃除についてだ。みんな、振り分けられた担当週に毎日きちんと行ってるか」

飼育委員担当の理科の先生が、険しい顔で言った。

黙りこんで先生と目をあわせないようにしているみんなに先生は少し苛立っているみたい。

先生のつま先が床をタンタンタンと踏む音が響く。

「忙しいのは分かるが、たった10分ほどで終わる簡単な掃除だぞ。それに3年生は受験生だから2、3学期に担当しなくてすむよう、1学期にまとめて担当がふられてるんだから。学校側も一応、お前たちに配慮した上での担当なのでしっかりするように」

(はぁ、めんどくさい。ウサギ小屋なんて、正直どうでもいいんだよ。ただ、掃除されてなくて校長に怒られて代わりに掃除してるのは俺なんだよ)

わたしは、先生の心の声をこれ以上聞きたくなくてうつむいた。

この学校、中学校なのに珍しくウサギを飼っている。

小学校でも飼われてたけど、そのときは昼休みにエサをあげてかわいがる女子とかもいて命の大切さを学ばせるために飼われてたってのは分かる。

でも中学生にもなると勉強や部活、恋愛とみんな忙しくなって、わざわざウサギにエサをあげる人はいないみたい。

昼休みに図書室に行く途中に見えるウサギ小屋に人がいるところは見たことがない。

飼育委員はクラスごとに掃除する担当が2週間ずつ振り分けられてて放課後、掃除することになっている。

確かわたしたちも再来週の2週間が、担当として回ってくるはず。