「おはよー」

(はぁー。今日1日だりぃな)

いつも明るい爽やかボーイの心の中は面倒くさがり。


「あー! 髪切ったんだね? 似合うー!」

(うわ、切りすぎ。似合わな)

イメチェンした友だちに拍手を贈る笑顔女子の心の中は毒舌。


「ねぇ、昨日のドラマ観た? すっごく面白かったよね!」

(あのドラマつまんないんだよね。こいつらほんとガキ。合わせて観るの面倒くさい)

おしゃべり好き女子の心の中は、友だちを見下している。


朝、登校して教室を見渡すなり押し寄せる、みんなの心の声。

教室に一歩入ると、みんなはわたしに気がついて一瞬静まり返る。


(ふふ、今日も地味)

(相変わらず負のオーラやば)

(目があっちゃった、なんか不吉)


見世物じゃないんですけど……

今日もまた顔をあげて教室に入ったことを後悔しながら、わたしは深くうつむいた。

ずり落ちそうな分厚いメガネを指で押し上げて床だけを見つめて自分の席に向かった。

みんなはすでに、わたしの存在に興味をなくしている。

わたしの席は逃げ場のない教室のど真ん中。

しぶしぶ席について、早々に本を広げて読み始める。

わたし、立花 澪(タチバナ ミオ)

人の顔を見ると、心の声が聞こえる力を持っています。

はぁ……。

こんなはずじゃなかったのに。

残り1年になったこれからの中学生活を想像しても、どんより暗いのが容易に想像できて、ため息がとまらなかった。