そこは、お客さんが自分で焼いて食べるお好み焼き屋さんで、相川さんはとても楽しそうにお好み焼きを焼いていた。


本当に、相川さんはあの頃と少しも変わらない。
明るくて元気で……



「あのね、松本君…
ちょっと変な相談して良い?」

「え…?何?」

「うん…実はね……」

そう言った後の言葉がなかなか出て来ない。
クラスメイトとはいえ、こんなに久しぶりに会った僕に相談したくなるっていうのは、きっと相当な困り事だ。
僕になにが出来るかはわからないけど、少しでも力になれるのなら、なんでもするつもりだ。



(あ……)



その前に僕には言うことがあった。
あのことを黙ったままいるのは、やっぱり卑怯だ。
話題にも出ないくらいだから、相川さんは全く気にしてないのかもしれないけど…でも、やっぱり話さなきゃ。



「実は、年賀状が……」
「実は、年賀状を……」

僕と相川さんの声が重なった。



「あ、ごめん…どうしたの?」

「え…いや…その…」


いざとなると、やっぱり話しにくかった。

せっかく良い雰囲気で過ごしてるっていうのに、あんなこと話したら、相川さんは怒って帰ってしまうかもしれない。



「……松本君…どうしたの?」

相川さんはそう言って、心配そうな顔をして僕をみつめてた。



(本当に、君は優しいんだから…)



僕の心は決まった。
やっぱり、これは話さなきゃいけないことなんだ。



「相川さん…年賀状、届いた?」

「年賀状って…えーーーーっ!
あ、松本君、みきおって言ったっけ?」

「そうだよ。イニシャルはM.M」

「じゃ、じゃあ、あれは……」

目を丸くする相川さんに、僕は大きく頷いた。



「な、なんで……?」



ついに話す時が来た。
誰にも話すことはないだろうと思ってたあの話を……
しかも、相川さんに直接話すことになるなんて……