「あ…相川さん!」

僕は思わず声を出してしまってた。
だって、僕の目の前に、相川さんがいたんだから。
びっくりしすぎて、考える前に声が出てたんだ。



「え……?あ…ら、蘭学者!」

振り返った相川さんが、おかしなことを言った。



(な、なに?蘭学者って…??)



「あ、あの…相川さんだよね?」

「う、うん。」

そういえば、相川さんと最後に会ったのは、多分、十年近く前だったと思う。
相川さんのお父さんが亡くなられた時、僕は、呼ばれてもなかったけど、葬儀に行った。
相川さんのことが心配だったから…
あの時の相川さんは憔悴しきった顔をしてて…
そりゃあそうだ。
お父さんが亡くなられたんだから。
なのに、僕は気の利いた言葉も思いつかずに、ただ「無理しないで」としか言えなかった。



あの時と比べると、今、目の前にいる相川さんはずっと元気そうで、それだけで僕はどこか嬉しいような気がした。
だけど、相川さんは、なんだか落ち着きのない顔で僕をちらちら見てる。



(……もしかして、気付いてる!?)

そう思うと、僕の鼓動は一気に速さを増した。



「あ、あの、相川さん…」
「ご、ごめんなさい。」

僕と、相川さんの声が重なった。