「あ…そういえば、お家の方は大丈夫なの?
引っ越しの準備があるんでしょう?」

私は沈んだ心の中を悟られまいと、わざと明るい声でそう訊ねた。



「うん、それはもう大丈夫。
家族は、大みそかから、皆、親戚の所に行ってるんだ。
家の中はひっくり返ってるから、落ち着いてお正月を迎えられないからね。」

「あれ?松本君はなんで行かなかったの?」

「え…そ、それは……」

松本君は、急に落ち着きをなくし、頬を赤らめ俯いた。



え?どういうこと??



甘みの強いホットココアをごくりと一口飲み干したら、私の頭の中に、ある考えがひらめいた。



(まさか、私からのお返しの年賀状を待って…??)



そ、そんな…それはあまりにも自惚れ過ぎだ。
松本君が、私のことを好きだったのは大昔のことで…
だから、そんなことなんて、ないない!



「ま、松本君、せっかくここまで来たんだから、どんなお店があるのかあちこち見てみようよ!」

恥ずかしくなった私は、そんなことを言って、ココアを飲み干す前にカフェを飛び出した。