とりあえず薬を飲ませ、冷却シートを額に貼り、布団に寝かせた。

 苦しそうに息を切らしている。


「こんなになるまで働いて・・・」

 こんなに熱を出してまで働く智明がダメな息子のはずがない。


「なんで? なんで智明がこんな目に遭わないといけないの? ねぇ、ねんで・・・?」

 人は神を崇め生きているけど、神様って本当にいるの? 
 もしいるならなんで、なんでこんな智明を放っておくの? 

 こんなやさしい人が弱って行くのを、傷付くのを黙って見てるの? ねぇ、なんでよ・・・ 助けてよ、智明を助けてよ!

 私は智明の手を強く握りしめながらそう願った。


「杏子・・・?」

「ごめん、起こしちゃった?」

 私は頬を流れる涙を、慌てて拭った。


「いや・・・ 杏子・・・」

 いつも弱さを見せない智明が、とても弱々しい目で私を見てる。

「どうしたの? どこか痛い?」

「ありがとう・・・」

 智明はそう言って笑みを浮かべた。私はその姿に耐え切れなくなって、智明に抱き付いた。


「おっ、おい・・・ うつるぞ・・・」

「いいよ、そんなの!」

「よくない、やろ・・・」

「黙れ!」

 私はそう言うと、智明の唇にキスをした。やさしく、そして少し激しく、舌を絡ませた。

 いつもなら抵抗する智明が今日はしない。それどころか受け入れてくれる。


「だから、うつるって・・・」

「いいよ、私にうつして。それで智明が元気になるなら、それでいい」

私は智明が抵抗しないことをいいことに、何度も何度も唇を重ねた。