それから私は浅尾くん、いや智明とよく話すようになった。
ドラッグストアへは智明に会いに行ってると言っても過言ではない。


「智明、頑張ってる?」 

「いつの間にか呼び捨てですか?」

「いいでしょう? 智明も呼び捨てにしてくれていいよ? それと敬語は禁止。いつまでも堅苦しいでしょう?」

「でも、お客さんですし・・・」

「そう、じゃあ敬語使うごとにキスするよ?」

「はぁ? なんですかそれ?」

「ああ、敬語! はい、一回キスね」

 私はレジにいる智明に顔近付け迫る。


「ああ、酔っぱらいが! わかった、わかったから! 杏子!」

「おおっ、よろしい。けどキスが出来なかった、残念・・・」

 私は口を尖らせ、あからさまに残念そうな顔をする。


「いや、そんな風にするもんじゃないから!」

「じゃあどんな時にするの?」

「はぁ?」

「ねぇ、どんな時にするの?」

 こういうことに照れてしまう智明が、なんだか可愛い。


「ああ、うるさい! 外へ行ってろ!」 

 からかい過ぎて、私は智明に追い出されてしまった。


 私は智明とキスしてもいいと思っていた。いや、したいと思っている。

 私はいつの間にか、智明のことが好きになっていたのだ。