「でもなんで? 浅尾くん、私のこと知らないはずなのに、なんで私の気持ちがわかったの?」

「今日、出勤した時に店長に聞いたんです、楠田さんのこと」

「私のことを?」

「はい。とても弱くて傷付きやすく、時々自分を追い詰めて見失うけど、本当にやさしくて、純粋でいい子なんだって」

「河名さんがそんなことを・・・」

「俺でよかったら、話くらいは聞きますよ?」


 浅尾くん・・・

「うん、ありがとう」

 私は自然と笑みがこぼれた。


「そうだ、ちゃんと自己紹介していなかったよね? 改めて、私は楠田杏子、よろしくね」
「俺は浅尾智明です、よろしくお願いします」

 不思議な子だ。私よりずいぶん若いのに、私より心の痛みを知っている。

 浅尾くんは、私が一番欲しかった言葉をくれた。


 自分らしくない行動を受け入れてくれた、わかってくれた。

 そしてこの後悔で今までの自分が一瞬できえてしまいそうな私を、無くならないと言ってくれた。私はそれだけで、後悔が洗い流されたような気がした。

 ううん、後悔をしても、またやり直せることを教えてくれたんだ。 


 浅尾くん、ありがとう。

 私はその時、きっと今までで一番いい笑顔で笑えていた。