「……分かった」

綾の言葉に僕は頷くと、綾の後をついてテントの中に入る。

「……懐かしいな」

中に入った瞬間、僕は小さい頃の記憶を思い出した。



僕が大道芸に興味が出たのは、5歳の時だっけ。親戚が連れて行ってくれたサーカスを見て、感銘を受けたんだ。

サーカスからの帰り道、親戚からジャグリングの仕方を教えてもらって、それからジャグリングを練習するようになったんだ。

『……難しいな……』

家で練習すると両親に怒られるから、僕は近くの公園でジャグリングの練習をすることに。

投げたボールを上手く取れなくて、落としてしまう。そのボールを拾おうとした時、誰かが僕の持ってたボールを拾った。

顔を上げるとそこには優しそうな男性がいて、男性は優しく微笑む。

『君、お父さんとお母さんは?』

『……えっと……』

僕が男性の問いかけに答えられないでいると、男性は『そのボール、僕に貸してくれる?』と僕に手を出した。

僕は『分かった』とボールを男性に渡す。男性は、そのボールでジャグリングを始めた。

『……』

男性は、色んな技を手を止めることなく連続でしてからジャグリングを止める。

『……すごい!すごいよ!僕も上手くなりたいな……』