少し晴輝をじっと見ていた静瑠は、晴輝から離れると「まぁ良いや」と僕らに背を向けた。

「……俺は、お前らが嫌いだ。じゃあな」

それだけ言い残すと、深い青色の髪の子は姿を消す。

「瑠依、あいつが……話してた子?」

菫の問いかけに、僕は「うん」と返した。

「……本当に、攻撃して来ないんだね。でも、あの感じを見ると……彼は、瑠依以外の他人を全くといって良いほど信頼していない……」

「……」

僕以外の他人を信頼していない、か……何だろう。僕と同じ、だな……。

「となると、瑠依しか駄目なのか……」

「え?」

菫の呟きに、僕は菫に目を移す。

「あいつを救えるのは、瑠依しかいない」

「…………救う?僕が、彼を?」

「悪霊ってね……大人しくても、負の感情に支配され続けるから、すっごく苦しいんだよ。ボクが、そうだったから……だから、瑠依が……彼を救ってあげて」

「……」

何だろう、この感覚。何だか、複雑だな……。

「無理だよ……」

「え?」

「無理なんだよ!僕に、彼を救うことなんて……!」

「でも、助けないと……ずっと、負の感情に支配され続けるんだよ?そのうち、ボクらに攻撃するかも――」

そんなことを言い続ける菫に、きっとカッとなっていたんだろうな。気付いたら、僕は菫を睨んでいた。僕の表情を見た菫は、少し驚いた表情で黙り込む。