そう言って、菫は立ち上がると僕を真っ直ぐに見つめた。

「……あの時は、周りの人間が敵に見えた。紫乃に、誰一人と近づけさせたくなかったんだよ」

「……」

「彼も、一緒だとしたら?」

「……もしかして、僕以外の皆を敵として見て?」

「……その可能性が高いだろうね。でも、瑠依の精神状態が安定しているから、攻撃をする気になれなかった……だから、皆を見たくないから消えたってところかな?」

「……お前、一体何者なんだ?」

どこからか声が聞こえてきて、僕らは一斉に声がした方を向く。開けられた窓から見える木の上には深い青色の髪の子が座っていて、色素の薄い水色の目は菫を捉えていた。

彼は、さっきの……。

「……いつの間に!?」

「何だ?俺がいた事に気づいていなかったのか?……まぁ良い」

そう言いながら、深い青色の髪の子は木から飛び降りて庭に着地した。

「どうして、悪霊がここに?」

透の言葉に、深い青色の髪の子はふっと笑う。

「知っているはずだ。ライラに透……そして、菫、と言ったか。俺は、瑠依の負の感情から生まれた悪霊だぞ?瑠依が、天国に入れるなら俺は天国に入れるんだ……ん?」

何かに気づいたらしい深い青色の髪の子は、晴輝に近付いた。いきなりの行動に、晴輝は戸惑った様子で深い青色の髪の子を見つめていた。

多分見つめることしか、出来ないんだろうな……。