美貴恵がさおりと半年ぶりの電話をし終わったそのころ・・・
芳樹は相変わらず多忙な日を送っていた。


打ち合わせ、取材、撮影立会い、執筆とこなさなければならない仕事はいくらでもあった。
時間と仕事に追われる毎日。

それでも心の片隅に美貴恵の存在はたしかにあった。
気になっていたし、ふとした瞬間に美貴恵のことを考えてしまう。

しかし、その繰り返しをあえて無理矢理消してしまおうとは思わなかった。

もちろん仕事に没頭しているときは、目先の雑務をどうやって処理するかを考えることで精一杯だったが、仕事が一段落するとコーヒーを飲みながら色々なことを考える。

こうした時間も自分にとってとってはまだ必要だと思えた。

(君以外の他の誰かを、まだ愛せずにいる 本当に大切だったから)

正直な気持ちだった