華やかなファッションモデルが写ったグラビア。
オシャレできれいなジュエリー。
どのページをめくっても、そこには女性の憧れが詰まっていた。

ひととおり目を通し雑誌を棚に戻そうとしたとき、最後の数ページが車のページであることに気がついた。

(そういえば芳樹は車好きだったっけ)

そんなことを頭の片隅に思い浮かべながら本に視線を落とす。すると、美貴恵の目に映ったのは見覚えのあるバッグを持つ男性の横顔。
見間違えるはずもない芳樹の姿だった。

雑誌のなかの芳樹はオシャレな車の横で笑っていた。
モデルなどではなく、このページを書いた筆者紹介として写真が掲載されていたのだ。

おさまりかけていた気持ちを鷲づかみにされたようだった。

(芳樹・・・)

雑誌をすばやく棚に戻し店をあとにした。

(どうして、どうしてこのタイミングなの。もうあなたの顔を見ることなんてないはずだったのに)

瞳から大きな涙がこぼれ落ちる。
あの時、二人の時間はピタリと止まったはずだったのに。

美貴恵の心は震えていた。
忘れようと思っても忘れられない思い出。

もう逢えないと思っていたあの人への想い。壊してしまったはずの二人の時間。

それでも、いまさらどうにもならない現実をかみ締めるしかなかった。

ワタシノ キモチハ ドコニ アルノ?