美貴恵はオープンカーの助手席で後方に流れていく景色を眺めていた。

冬場の澄んだ空気が真っ青な空を作り出し、橋の上から見える港はまるでオモチャのようだった。

笑顔で今日の撮影について話しながら、ハンドルを握る男性。

まだよく知らない人
名前はサワダヨシキ

それだけの人。


― 撮影当日の四日前 ―

美貴恵が自宅のソファーで携帯のメールを打っているときだった。
Pipipipi…

見知らぬ番号からの着信。

(誰?)

ほんの一瞬ためらったがボタンをして電話に出る。

「はい」
「あ、吉里さんでいらっしゃいますか? 澤田といいます。はじめまして」
「あ、は はい」