芳樹は撮影用にメーカーから借り出した赤いオープンカーを走らせていた。

本当なら昼間のうちに車を借りておきたかったのだが、仕事が長引いたおかげで車を受け取ったのは夕方の6時をとうに過ぎてしまったのだ。


撮影する場所の下見をするため、都内から横浜へ向かって車を走らせる

しばらく走ったあと交通量が減るエリアで車を道路わきに停車させ、屋根をオープンにする。
ルーフを開けるためのボタンに触れると、作動音と共に頭上の視界が開け、こもっていた車内の空気が一気に外へ飛び出していく。

(これでOK。せっかくのオープンカーなんだから)

真冬の夜、芳樹は冷たい空気の流れを感じながら再びアクセルを踏み込んで車を発進させた。

出発して三十分。車は県境に差し掛かっていた。