「プレゼント用にピンク色の花束を作ってもらえますか?」

芳樹はたどり着いたフラワーショップで、そうお願いしていた。
美貴恵が大好きなピンク色。

10分ほどで完成したその花束は、想像していた以上に華やかで可愛らしかった。

(ちょっと大きすぎたかな?)

片手で持つには、少し余るほどの花束。

(喜んでくれるといいけど)

ありがとうございました!!

フラワーショップの店員が声を掛ける。
その店員に軽く会釈して、店を出ると太陽がまぶしく光っている。


道路わきに停めた車に戻ろうとしたとき、ポケットのスマホがラインの着信を知らせる。

(美貴恵かな・・・)

芳樹がスマホの画面に視線を移した瞬間、背後から強烈な急ブレーキの音。
慌てて振り返る、芳樹。


ドンッ!!!!


鈍い音とともに、芳樹の体が跳ね飛ばされ、アスファルトの上に転がる。
糸が切れた操り人形のように動かない。

無数のピンクの花びらが宙に舞う。
投げ出されたスマホ。

キャーッ!!!

見知らぬどこかの女性が悲鳴を上げた。

その声を聞き、フラワーショップの店員が慌てて駆け寄ってくる。

道端に落ちたスマホの画面はひび割れたまま、ラインの通知を表示していた。

(今から家を出るね)

美貴恵の送ったライン。

既読にはならなかった。