芳樹と繋がっている時間が戻ってきたことで美貴恵の気持ちは、ずいぶんと明るくなった。
毎日来るラインや電話。

話すことは他愛のないことだったけれど、それが日常にあることが嬉しかった。
だからこそ、美貴恵の中に、ひとつだけ残る不安材料を消してしまう必要があった。

あのとき、美貴恵が芳樹を遠ざけたたった一つの理由。

それは、二人の未来が見えなかったから。

芳樹のことを想う気持ちは、誰にも負けなかった。
でも、どんなに愛していても飛び込んでいくことができない悲しさ。

その先にあったのは、切なさに包まれた美貴恵の決断。
涙と悲しみと迷いに翻弄されながら、時が静かに流れていった。

(逢いたい・・・)

忘れることなどできなかったから、そっとしまい込んだ想い。