しばらくして、一人の女性がファイルを片手に入ってきた。
芳樹と大志は帰り支度をしていた手を一回休め、自分の名刺を探しはじめる。

大志はすぐさまポケットから名刺を取り出し、その女性に手渡している。
いっぽう芳樹は名刺入れをカバンの奥にしまっていたために、大志の名刺交換が終わってもまだガサゴソと名刺入れを探している。


ようやく名刺入れを見つけ一枚取り出す。そして、名刺を手渡そうと視線を上げる。

(あっ)

芳樹はその女性の顔を見た瞬間、思わず声を出しそうになった。

そして、女性社員もまた、芳樹と同じように驚きの表情を浮かべていた。