私物が無くなった病室に、私と高峰さんが残される。
私たちに気を遣ってくれたようだ。
「お母さん、来てくれたんですね。良かった」
「まぁ、仕方ないからでしょ。私はいま重いものを持てないもの」
恥ずかしいのか、ふいっと顔を背けるけど、やっぱり嬉しそうな顔に見えるのは私の気のせいでは無いと思う。
「……お礼、言っておいてね」
不意に高峰さんが私にそう言って来たので、私は何のことだかさっぱり分からず「え?」と首を傾げた。
「……藤野先生のお父さんと、あと……多分、弟さんに」
「えっ……」
気付いてたんだ!?
「──馬鹿にしないでよ、私を誰だと思ってるのよ」
「えっと、だって……」
「時々、私の様子を見に来てる人がいるのは分かってた。年配の先生と、若い先生。年配の人はすぐに誰か分かったわ、ネットで調べたから。この病院の教授なんでしょ?」
「……はい」
「どうりで……いろいろ至れり尽くせりだと思った」
頭の回転が速いと、そう言う所にまで気付いてしまうらしい。
脱帽、と言うしか無い。



