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高峰さんの退院の日がやって来た──。
「高峰さん、退院おめでとうございます」
私はそう言って、小さなブーケを彼女に手渡した。
「……お金の無駄でしょ」
そう言って私を白い目で見ながらも、差し出したブーケを受け取ってくれる。
「無駄じゃ無いです、気持ちです」
「ほんと、おめでたい人」
「えへへ、ありがとうございます」
「褒めてない」
高峰さんの態度は相変わらずだけど。
でも、その表情が彼女の気持ちを全て物語っていて……私は思わず嬉しくなった。
迷ったけど、ブーケを持ってきて良かった。
──高峰さんの顔は、ほんのりと赤くなっていたから。
「準備は出来てるの?」
私の後ろ──ドアの付近から、女性の声がした。
私がその声に少し驚いて振り向くと、そこにはとても綺麗な40代後半ぐらいの女性が立っていて──それが高峰さんのお母さんだとすぐに分かった。
私は彼女のお母さんに「こんにちは」と挨拶をすると彼女のお母さんは驚いた表情で私を見つめ「え、あぁ、こんにちは……」と、少しだけぎこちなく返した。
きっと高峰さんには怒られると思うけど、私は「後輩の立花です」と自己紹介しておく。
案の定、彼女からは怒りのオーラが漂うけれど、気にしない気にしない。
だって私はいまとても気分が良いから。



