先生がいてくれるなら③【完】


「実はもうひとつあって……」


私の言葉に、二人が一瞬息をのむのが分かった。


ボイスレコーダーは高峰さんにとって、保険に過ぎない。


“脅している本体” がある事は、きっと二人には分かっていたはずだ。



「えっと……実は、孝哉先生と一緒にいる……その、親密な動画も撮られてて……」


二人の表情が一気に険しくなる。


私は二人が何かを口にする前に、「あっ、大丈夫です、それも、消して貰いました」と慌てて言い添えた。



「──じゃあ、そもそも脅されてた内容って、その動画と言う事ですか?」


光貴先生の言葉に、私はコクリと頷く。



「ちゃんとそれも消してくれました。バックアップも無いそうです」


「……本当に?」


「はい。私もその件については高峰さんに確認しました。彼女の性格上、きっとバックアップはあるだろうと思っていたから」


「そうだよね……」


光貴先生がそう言うと、教授も同感だと頷く。


「でも、無いそうです。理由を聞いたんですけど……“必要ないから” だと言ってました」


「……必要ない、ねえ」


「そんな面倒なことをしなくても、私なら簡単に落ちると思ったそうで……」


私は、あはは、と苦笑いするしかない。


そんな私を見て光貴先生が「それは彼女の大きな誤算でしたね」とニッコリ笑った。