「実はもうひとつあって……」
私の言葉に、二人が一瞬息をのむのが分かった。
ボイスレコーダーは高峰さんにとって、保険に過ぎない。
“脅している本体” がある事は、きっと二人には分かっていたはずだ。
「えっと……実は、孝哉先生と一緒にいる……その、親密な動画も撮られてて……」
二人の表情が一気に険しくなる。
私は二人が何かを口にする前に、「あっ、大丈夫です、それも、消して貰いました」と慌てて言い添えた。
「──じゃあ、そもそも脅されてた内容って、その動画と言う事ですか?」
光貴先生の言葉に、私はコクリと頷く。
「ちゃんとそれも消してくれました。バックアップも無いそうです」
「……本当に?」
「はい。私もその件については高峰さんに確認しました。彼女の性格上、きっとバックアップはあるだろうと思っていたから」
「そうだよね……」
光貴先生がそう言うと、教授も同感だと頷く。
「でも、無いそうです。理由を聞いたんですけど……“必要ないから” だと言ってました」
「……必要ない、ねえ」
「そんな面倒なことをしなくても、私なら簡単に落ちると思ったそうで……」
私は、あはは、と苦笑いするしかない。
そんな私を見て光貴先生が「それは彼女の大きな誤算でしたね」とニッコリ笑った。



