先生がいてくれるなら③【完】


食後はサロンで藤野家の男性陣と食後のコーヒーと雑談を楽しんでいたけど、途中で光貴先生は病院から呼び出しがあり、足早に病院へと帰って行った。


広夢さんはお母様が呼んでいるとかで離席してしまい……この場にいるのは、私と藤野教授だけ。



……。


一番緊張する人が残っちゃって、まぁ、どうしましょう。


な、何か話題を、わ、話題を……。



必死で話題を探す私は、ふと、初めてここを訪れた日のことを思い出していた。


あの日──初めて藤野家の全員を、目の前にした日──。



私はとても緊張していてガチガチで、食事も会話もろくに楽しめなかった。


あまりの緊張に、ふと湧き上がった小さな違和感が、あっという間に──本当にあっという間に、吹き飛んでしまった。



だけど──



「……教授、あの、……」

「うん?」

「ひとつ、お聞きしても良いですか……?」

「もちろん」


私は、あの時感じた “小さな違和感の行く末” を、躊躇いがちに口にする──。







「孝哉先生の……お父様は……もしかすると、教授じゃないのでは……?」







私の言葉に目を丸くした教授は、まだ返事を口にしない。


私の目をじっと見つめている。


少し、驚いた表情で……。