花火が点火されたのだろう、花火の破裂音がこの部屋まで聞こえてきて、あっという間に静かになる。


「あ、……終わったね」


細川先生が呟いた。


もうすぐ見終わった生徒達が戻って来る。


私もクラスのホームルームに出なきゃいけない。


そして、こんな風に細川先生と一緒にいるところを誰かに見られるのも、すごく困る。


「細川先生」

「ん?」

「もう行った方が良いです」

「……うん、そうだね」


そう答えた細川先生は、まだ動こうとしない。


「先生、一緒に出るわけにはいかないので、先に行って下さい」


私が立ち上がると細川先生もようやくゆっくりと立ち上がり、私の頭を一度クシャリと撫でて「じゃあまたね」と言って数歩歩いたあと一度振り返り、「あ、そうだ。袴姿、似合ってたよ」と付け加えて部屋を出て行った。



同じ言葉を、もし藤野先生にかけられたなら──と考えてしまい、私は慌ててその想いを打ち消すために頭をブンブンと横に振った。



細川先生の足音が遠ざかるのを確認し、私はそっと部屋を出て鍵をかける。



──はぁ。



私はひと気のない特別教室棟の廊下を歩きながら、疲労と安堵のため息を吐いた。





高校生活最後の文化祭は、こうして幕を閉じた────。