「もう一回練習したら、今日はもう時間がないから、終わり、な?」
帰りも、広夢さんの運転する車で送ってもらうことになってる。
時計を見ると約束の時間まで、もうちょっとしかない。
「もう一回だけ、キスさせて……」
先生が囁いて、ゆっくりと顔が近づく。
私は再び目をぎゅっと閉じて、先生の口づけを待った。
ふわりと重なる先生の唇は、やっぱり温かくて、柔らかくて、心地が良い。
私を焦らせないように、なるべく優しく触れてくれているのが分かって、とても申し訳ない気持ちになる。
唇に受ける柔らかく甘い暖かさに、ドキドキして、くらくらして……。
──結局あまり上手に呼吸できず、今日はもう帰らなくてはならなくなった。
「……先生、ごめんなさい……」
「焦らなくていいと思うけどね。そう言う初々しいのも、いまだけなんだから」
先生はそう言って、私の額にキスをして、頭をふわりと撫でた。
……うーん、いまだけ、かぁ。
18歳になった私は、結局は相変わらずで、まだまだ子供だ。
どんなに背伸びをしたって、先生との年齢差は絶対に埋まらない。
分かっている。
でもいまは、少しだけでも、悪あがきしてでも、先生に近づきたい……。
──年上の男性を好きになることの難しさを実感した、18歳の誕生日だった。