先生がいてくれるなら③【完】


──心臓が、爆発してしまいそうだ。



私の “お願い” を聞いたら、先生はどう思うだろう?


やっぱり言わないでおこうか、とも思ったけど、もう後には引けない気がして、私は思い切ってその “お願い” を言うことにした。




「先生、おとなの、……キス、を、教えて下さ、い……」




恥ずかしさで、最後の方はとても声が小さくなってしまった。


「……立花、…………え、っと……」


先生が珍しく狼狽えている。


「私、18歳になりました……。先生から見たら、私はまだまだ子供だと思うけど、ずっとこのまま子供なわけじゃないです、だから、あの……」


“大人のキス” がどんなものなのか、ちゃんと分かってるわけじゃない。


触れるだけのキスだけでも息が上がって、いっぱいいっぱいになってしまうのに、大人のキスが出来るはずがないのも、よく分かってる。


でも、先生が、そんなので満足してるとは思えない。


だって先生は大人で、私なんかよりずっと美人で素敵な大人の女性と交際してきた過去があって、なのに私はいつまで経っても子供で、何も知らなくて、何も出来なくて……。


こんなのじゃ、いつか飽きられて、捨てられてしまうんじゃないかと、とても不安になってしまうのだ。