──今日食べたケーキは、今までで一番美味しい誕生日ケーキだったと思う。
私はきっと、この日のことを、この瞬間を、この味を、一生忘れない。
先生、本当に、大好きです……。
食べ終えた食器を食洗機にセットし終えて、ほんの束の間の、二人きりの時間──。
どれだけこの時間が恋しかったことだろう……。
ソファに座って待っている先生が、私の方に手を伸ばして「早くおいで」と甘い声を出す。
学校での、感情のこもらない冷たい声とは真逆で、どこにそんな声を隠し持っていたんだろうと思うほどだ。
近づいて先生の手に触れると、するりと手を滑らせて指を絡ませ、私を引き寄せた。
先生の隣にピタリとくっつくように座らされ、頬が熱くなる。
「改めて……、誕生日おめでとう」
至近距離から落ちてくる甘い囁きに、私はくらくらしてる。
「ありがとうございます。今日何度目かな、先生からおめでとうって言葉聞くの」
「何度でも言いたい気分」
先生はそう言って、私の前に小ぶりの箱を差し出した。
「えっ。プレゼント、用意してくれたんですか? 忙しいのに?」
「恋人の誕生日プレゼントを用意するのに、忙しいのは関係無い」
「え、だって、」
「いいから、開けてみて」
私はコクリと頷くと、綺麗にラッピングされた包みを解き、ゆっくりと箱を開ける。
──そこには、とてもシックで素敵なデザインの腕時計が納められていた。



