「……細川先生。こんにちは……」
細川先生がにっこりと微笑みながら私の目の前に立っていて、私は小さく会釈をした。
「こんにちは。もしかすると、デートの待ち合わせ?」
私はほんの少しうんざりしながらも、「はい」と頷いた。
最寄り駅が同じだから出会ってしまう確率は高いんだけど、それにしても多すぎない?
前に会った時は、すぐに広夢さんが来たから挨拶だけで済んだけど……今日は待ち合わせの時間までまだ10分以上ある。
広夢さんを待たせるよりはずっと良いんだけど……、でも……10分も細川先生と世間話をしなきゃならないと思うと、正直言ってちょっとしんどい。
「……前にも思ったんだけど、それ、手土産?」
細川先生は、私が持っている洋菓子店の手提げ袋を見ながらそう尋ねた。
「えっと、ご実家におじゃまするので……」
気乗りはしなかったけど、こう答えることによって “親も公認の仲” だと思って引き下がってくれないかな。
細川先生から返ってきた返事は、「ふぅん」と言う簡単な返事だけだった。
細川先生がこうやって私にやたらと絡んでくるのは、藤野家の三兄弟曰く、“私に気がある” のだそうで……。
ホントにそう、なのかなぁ?



