先生がいてくれるなら③【完】


「……細川先生。こんにちは……」



細川先生がにっこりと微笑みながら私の目の前に立っていて、私は小さく会釈をした。


「こんにちは。もしかすると、デートの待ち合わせ?」


私はほんの少しうんざりしながらも、「はい」と頷いた。


最寄り駅が同じだから出会ってしまう確率は高いんだけど、それにしても多すぎない?



前に会った時は、すぐに広夢さんが来たから挨拶だけで済んだけど……今日は待ち合わせの時間までまだ10分以上ある。


広夢さんを待たせるよりはずっと良いんだけど……、でも……10分も細川先生と世間話をしなきゃならないと思うと、正直言ってちょっとしんどい。



「……前にも思ったんだけど、それ、手土産?」


細川先生は、私が持っている洋菓子店の手提げ袋を見ながらそう尋ねた。


「えっと、ご実家におじゃまするので……」


気乗りはしなかったけど、こう答えることによって “親も公認の仲” だと思って引き下がってくれないかな。


細川先生から返ってきた返事は、「ふぅん」と言う簡単な返事だけだった。



細川先生がこうやって私にやたらと絡んでくるのは、藤野家の三兄弟曰く、“私に気がある” のだそうで……。


ホントにそう、なのかなぁ?