……あ、先生の匂いがする……。
すごく落ち着くし、幸せすぎて心が温かくなる。
少し前まで離ればなれだったから、余計に……。
私は先生にギュッと抱きついて、「先生、どうやったら機嫌直してくれますか?」と尋ねた。
先生はしばらく考え込んだ後、「幾つか約束して」と言ったので、私はコクリと頷く。
「まず、危ないことはしないように」
ははは、なんか小さい子に言うお父さんの台詞……。
私は苦笑しながらコクリと頷いた。
「それから、他の男について行かないように。特に細川。アイツ、絶対ダメ」
私がコクリと頷くと、先生は私を抱き締める腕を緩めて、私の顔を覗き込んだ。
「……お前、ホントに分かってる?」
「わ、分かってますっ」
見上げながら私がそう答えると、意外な言葉が降ってきた。
「じゃあ、あの男がお前を狙ってるの、気付いてるか?」
……へ?
狙ってるって、何をだろう?
財産?
いや、うちに財産なんか無いし、……って、あれこれ考えを巡らせていると、先生の眉間に皺が寄る。
「ほら、気付いてない」
「えっ、あの……、」



