先生がいてくれるなら③【完】


……あ、先生の匂いがする……。


すごく落ち着くし、幸せすぎて心が温かくなる。


少し前まで離ればなれだったから、余計に……。



私は先生にギュッと抱きついて、「先生、どうやったら機嫌直してくれますか?」と尋ねた。


先生はしばらく考え込んだ後、「幾つか約束して」と言ったので、私はコクリと頷く。


「まず、危ないことはしないように」


ははは、なんか小さい子に言うお父さんの台詞……。


私は苦笑しながらコクリと頷いた。


「それから、他の男について行かないように。特に細川。アイツ、絶対ダメ」


私がコクリと頷くと、先生は私を抱き締める腕を緩めて、私の顔を覗き込んだ。


「……お前、ホントに分かってる?」

「わ、分かってますっ」


見上げながら私がそう答えると、意外な言葉が降ってきた。


「じゃあ、あの男がお前を狙ってるの、気付いてるか?」



……へ?



狙ってるって、何をだろう?


財産?


いや、うちに財産なんか無いし、……って、あれこれ考えを巡らせていると、先生の眉間に皺が寄る。


「ほら、気付いてない」

「えっ、あの……、」