先生がいてくれるなら③【完】


私は細川先生と出会った時の事を話すかどうか迷った。


ここまで話したんだから、やっぱり話しておくべきだろう……。


そう思い直し、私は、先生に別れ話をした日に細川先生と初めて会った時の出来事と、英語科準備室での再会を簡単に説明した。


完全に鬼瓦になってた先生の眉間の皺は最早、日本海溝レベルにまで達している。


こわい……。


しかし話はまだまだ残っている。



「えっと、話を、昨晩のことに戻しても良いでしょうか……」

「ごめん、随分脱線させちゃったよね。続けて続けて」


眩しい笑顔でニッコリ笑う広夢さんに促され、私は、細川先生の家にいるタイミングで先生から電話がかかってきた事を話した。


「……あの時本当のことを言えなかったのは、細川先生に、私と先生のことがばれるのが怖かったからです……」


そう、決して他意はない。


「それと……」

「まだあるのか?」

「はい、すみません……」


やっと声を出したかと思ったら、私を咎める言葉……当たり前だけど…………。


「先生との電話を切った後、細川先生に『彼氏か』と問われて……。違うと答えるのもおかしいので、肯定しました。それで、このあいだ駅前で会った人か、と再び問われたので、悩んだんですけど……、広夢さんごめんなさい、『はい』って答えました」


「あぁ、僕は良いよ、全然。あの時、そう誤解させるように仕向けたのも僕だからね」


にっこりと微笑む広夢さん……。


そうか、広夢さんのあの言い方は、わざとだったんだ。