先生がいてくれるなら③【完】


「あの、えっと、雨が降り出す前は自宅で料理をしていたんですけど……材料が足りないことに気付いたのが7時過ぎでした……」


私は、駅前のスーパーまで急いで食材を買いに行ったこと、スーパーを出てすぐに雨が降り出し雷も鳴り出して、細川先生に会ったこと、雷がとても近くて危ないから細川先生の部屋に避難したこと──を、淡々と説明した。


淡々と説明したところで先生の怒りが解けるはずもなく、細川先生の名前が出たあたりから明らかにその怒りは増していた。


だけど、今のところ黙って聞いてくれている。



「それで……細川先生の部屋に避難したところで、すぐに、停電になって……」



私がそう言うと、先生の我慢も限界に達したらしく、「お前なぁ、」と低い声を出した。


私はビクリと肩を揺らす。


これは相当、本格的に怒ってる……当たり前だけど……。


「まぁまぁ、兄さん、話の続きを聞こうよ……」


広夢さんが先生を宥めてくれる。


広夢さんがいてくれて、本当に良かった……私ひとりだったら先生を怒らせて話が中断したまま終わり、だった気がする。



先生は怒りの表情を浮かべたまま私を睨んでいる。


私の話はまだ序盤で、ここからが……先生をもっと怒らせる本番って言うか……。


私は、最悪な展開になることも覚悟しながら、続きを話し始めた。