先生がいてくれるなら③【完】



──リビングのソファに私と先生、床に広夢さん、と言う構図で座って、私の話の時間が始まった。



先生、広夢さんだけ床って、酷くないですか?


むしろここは多分、私が床だと思います。


話の内容的にも、多分、きっと……。



「それで?」


たいした前置きもなく、先生が私の話を強引に前に進める。


「えっと……昨日、雷で停電したじゃないですか……」


既に怒ってる様子の先生をこれ以上怒らせるとか、地獄でしかないけど……私は話を続けた。


「先生が電話をくれた時にはどうしても言えない事情があったんですけど、あの、実はその時私、家にはいませんでした……」


「……はぁっ?」


先生が聞き直す声が、明らかに怒ってる……。


「……どこにいた」

「あの……、ある人のお宅に……」

「だから、誰」

「……あの、先に、説明して良いですか……?」

「ダメ。答えろ」


私がすぐに答えないでいると、広夢さんが「まぁまぁ、ここは明莉さんの話を先に聞こうよ」と助け船を出してくれたけど……


「……広夢、お前は黙ってろ。口を挟むなら帰れ」

「明莉さんが『帰って良い』って言ったらね」

「……」


先生は、広夢さんには案外甘い。


広夢さんと私を順に一睨みして、「……分かった、じゃあ先に説明して」と折れてくれた。