先生がいてくれるなら③【完】


エレベーターが最上階へと向かう中、私は昨日の細川先生との会話を思い出す。


……そう言えば、広夢さんを “彼氏” って事にしちゃってたんだった。


広夢さんにそのことを言っておいた方が良いよね、と思って広夢さんに顔を向ける。


「あの、広夢さん、今からちょっとだけお時間ありますか?」

「んー、僕は大丈夫だけど……」


そう返事をしながら、広夢さんは先生をチラリと見た。


先生は広夢さんを見ずに、私をジロリと睨んでいる。


「先生、あの、広夢さんにも同席して頂きたいんですが……」


そう口にしたところで、先生が「却下」と怖い顔で私の提案をあっさりと棄却した。


「広夢さんにも報告があるので……」

「無理」

「無関係じゃないって言うか……」

「抹殺」


えっと、最後の暴言はちょっと意味が分かりませんけど。


エレベーターが最上階に到着し、扉がスッと開く。


私に先に降りるように促した先生は、広夢さんを睨んでいた。


「先生っ」


広夢さんを降ろさないでおこうとする先生を私が声を掛けて諫めると、先生は舌打ちをしてる。


「先生、広夢さんにもお話があります。だから……」


先生はため息を吐いて、「話が終わったらさっさと帰ってもらうからな」と言って渋々了承した。