先生がいてくれるなら③【完】


「立花さん、ほら、携帯のライトも点いてるし、真っ暗じゃないよ?」



事情を知らない細川先生は、携帯を持ち上げて掲げて見せた。


「……っ!」


やだ、やめて、携帯のライトは、イヤ……!


そう言いたいのに、声にならない。


息を吸うのに、こんなに吸ってるのに、また、肺の中に酸素が入ってこなくなる。



「えっ、立花さんっ!? ゆっくり呼吸して! さっきみたいにゆっくり、吸って、吐いて、吐いて、って呼吸して!」


私はぎゅうっとしがみついて、必死に息を吸う。


──苦しい、先生、先生、助けて…………っ!



「立花さんっ、ゆっくり吸って、吐いて、吐いてっ、……ねぇ、聞いて!!」



聞いてる、でも、出来ない……っ、


苦しい、吸えない、酸素が、足りない、苦しい、苦しい……!!



「立花さん、ダメ、息吐いて! 吸っちゃダメ! 吐いて!」



なんで……!?


苦しいのに、なんで吸っちゃダメなの……!?


ひどいよ、酸素が欲しいのに、吸っちゃダメだなんて、ひどい……っ!



私が息を吸おうとすると、細川先生が私の口の前に手をふわりとかざした。


──吸えない、吸えないよ……!!



「お願い、息、吐いて! 吸うんじゃなくて、吐くんだよ! フーって、吐いて!」



ハァ……、ハァ……、