駆け寄ってきた細川先生が私を抱きかかえて何かを言っているけど、何も頭に入ってこない。
背中をさすられ、耳元で何かを指示される。
──な、に……?
もう一回、言って……、
意味が、分からなかった、先生、もう一回……、
「……、……、吐いて。ゆっくり、吸って、吐いて、吐いて……」
…………あぁ、
──すぅ、、、はぁ、はぁ……、
──すぅ、はぁ、はぁ…………。
「もう一回、吸って、吐いて、吐いて……」
何度も何度も、繰り返し、繰り返し……。
指示されるままに吸って吐いてを繰り返しているうちに、やっと、酸素が肺に入ってきた……。
まだ少し苦しいけど、息は、吸えてるし、吐けている……。
「大丈夫だよ、立花さん、怖かったね……」
細川先生が私を優しく抱き締めて背中をさする。
私はまだ身体の震えが止まらず、身体に力が入らない。
心臓も、痛いぐらいにドキドキしたままだ。
どうしよう、私、暗闇が、怖い────。
携帯のライトが眩しく光っているのも、怖い────。
でも、これを消すと、また本当の暗闇がやって来る。
どうしよう、どうしよう、どっちも、怖い────。



