「ボイスレコーダーはここにあるわよ。私が寝てる間にでも消せば良いじゃない? ついでに携帯電話は私の枕元」



彼女は枕元の携帯電話を指さし、ボイスレコーダーを手にニッコリと微笑む。


その瞬間私は、バックアップを取ってあることを確信した。


私が言葉無く首を横に振ると、彼女は声を立てて笑った。



「頭は悪いけど、察しは良いのね。そうよ、バックアップはちゃんと取ってある。これを消した所でどうにもならない。分かったならさっさとお家に帰って勉強でもしてなさい、おバカさん」



あぁ、反論の余地がないのが恨めしい。


彼女の頭が良すぎて、取り付く島もない。


私はがっくりと肩を落とし、項垂れたまま病室を後にした。




カチリ、カチリと時計の針は進む──


それは、私の意思に関係なく──


待っているのは、天国か地獄か──



先の見えない嵐の中を、まだまだ私は遭難し続ける────。