「い、言わなかったのは申し訳なかったと思います。でもそのお陰で、高峰さんが救急で運ばれてきたことも知らせて貰えたわけだし……。私が悪いのは謝ります、でも光貴先生は悪くないので、許してあげて下さい!」
私がそう言い終えるや否や、先生は鬼のような形相で「……だから、そこでお前が光貴を庇うから怒ってるって、なんで気付かない?」と問いかける先生に、私は思わず身じろぎをした。
「だ、だって、先生が怒ってるから……」
先生は、はぁ、と大げさにため息を吐いて私の背中に両手を回して抱き寄せ、ギュッと抱き締めた。
「俺が光貴に嫉妬してるって、思わないんだ……?」
思いがけない先生の言葉に、私は「えっ!?」と間抜けな声を出して先生の顔を見ようとしたけど、思ったよりも強く抱き締められていて、顔を上げることは出来なかった。
「……光貴もそうだけど、親父も、広夢も、……お前にやけに手懐けられてるのが気にくわない」
「て、手懐ける、って……、人聞き悪いです、先生っ」
「……どこが。……お前、絶対 “人タラシ” だろ」
「タラシ、って……」
「俺、何か間違ったこと言った?」
「うっ……、た、高峰さんにも同じ事言われました……」
「……あいつの事は嫌いだけど、なかなか見る目があるな」
感心してる場合じゃないですよ先生!



